『天地明察』
祝・本屋大賞!



というわけで、実に2ヶ月ぶりに書く「科学史雑話」カテゴリの記事は、
今日発表された本屋大賞の話題にしよう。

授賞作品は、以前に話題に出したことのある、冲方丁『天地明察』
江戸幕府の初代天文方、渋川春海を主人公としたフィクションである。
もともと碁打ちだった若き日の春海が天文学と出会い、
独自の暦を作り上げるまでの成長を描いた物語だ。



あくまでフィクションなので、細かいストーリー展開や人物造形は作者の創案になる。
(「キャラクター小説」という触れ込みもあるくらいだ。)
けれども、ベースになっているのはあくまで科学史上の実際の出来事なのである。

「参考文献」を見ると、お世話になっているS先生の本までちゃんと挙げられていたりする。
もっとも当の先生によると、自分の解釈とこの小説の作者の解釈が180度逆なところも
あったりするらしいのだが・・・。
しかしそういう「歪曲」があるにしてもなお、僕はこの作品の受賞を素直に喜びたい。

この小説の読者は、江戸時代の相当早くに西洋の科学と格闘した人がいたことや、
暦を作るということが国政と深く関わっていたことに気付かされるだろう。
和算というものにこの本で初めて触れる人も少なくないだろうし、
「理系」の天文学が「文系」の神道と結び付いていたことにも驚かされるはずだ。
(この点では、山崎闇斎のキャラの効果は高そうである。)

要するに、フィクションということで多少誤解を生みそうな部分があるにしても
(さすがに春海が関孝和に怒鳴りつけられるというエピソードはどうかと・・・)、
全体としてこの小説は科学史の面白さを存分に伝えている、
そう僕は思う。



ところで、本屋対象の受賞作はこれまですべて映像化されていると聞く。
『天地明察』についても、映画化ないしドラマ化をぜひ期待したい。

・・・で、その暁には科学史学会から特別功労賞でも贈るべきと思うのだがどうだろう。
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by ariga_phs | 2010-04-20 23:46 | 斜めから読む
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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