Shapin, "Leibniz-Clarke" (1981)
Steven Shapin, "Of Gods and Kings: Natural Philosophy and Politics in the Leibniz-Clarke Disputes," Isis, vol. 72 (1981), pp. 187-215.



副題にある「ライプニッツ=クラーク論争」とは、
ニュートンの代理人と言われるクラークとニュートンの最大のライバルことライプニッツとのあいだで
1715年から16年にかけて交わされた一連の文通のことを指す。

ライプニッツとクラーク(ニュートン)の自然や宗教に関する考え方が双方はっきり述べられ、
それが正面からぶつかっている(あるいはむしろ噛み合っていない)という文献である。
科学史(物理学史)では、時間と空間は絶対的か(ニュートン)相対的か(ライプニッツ)という
議論がなされたことでよく知られている。

余談だが、内井先生(京大科哲史の、前任の科学哲学の教授)の最終年度の演習がこれで、
僕はそのとき修士の一年目だった。懐かしい。

****

それでこの論文だが、思うにこれはタイトルが悪い。副題は
"Natural Philosophy and Politics around the Leibniz-Clarke Disputes"
のほうがまだしっくりくる。

ざっくりまとめると、ライプニッツが主張しているのと同じような自然哲学上のことがらを
当時イングランド国内の自由思想家と呼ばれる人々が言っていて、
クラークを始めとする人々(ニュートン主義者)は宗教的・政治的な理由から彼らと戦っていた、
したがってニュートン主義者がライプニッツの自然哲学を評価したとき、
そこでは社会的利用(social use)が中心的な役割を果たしていた、という内容。

正直、いまひとつ論がすっきり通っていないと思う。
あと、論争の内容そのものについては前半で少し概観がある程度なので、
それを期待して読んではいけない。

肯定的に捉えるなら、当時の社会状況を踏まえると何が見えてくるようになるか、という
一種の実験だと思ったらよいのだろう。
ただ、この論文ではイングランド側、つまりクラーク側しか論じていないのが気になる。
反対側(ライプニッツ側)についても同様の分析をしない限り、
この論文は完結しないのではないだろうか。
(あるいは、せめてもう少し限定したタイトルにするとか・・・。)

****

著者のシェイピンは科学史業界の有名人で、科学史に社会学的な関心を持ちこんだ中心人物。
この論文も読んで損はないのだろうが、最近出た著者の論文集に入っていないところを見ると、
本人もそこまでいい出来とは思っていないのかもしれない。
[PR]
by ariga_phs | 2011-01-20 23:20 | 何かに使えそう
<< 精度 最初の日々 >>

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

Vivre Comme Ornithorynque.
筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
ウェブサイトはこちら
カテゴリ
最新の記事
生存確認
at 2013-08-10 21:15
橋本毅彦『近代発明家列伝』
at 2013-06-15 21:32
オディロン・ルドン 夢の起源
at 2013-06-08 21:46
量子の地平線
at 2013-06-02 15:58
仕事
at 2013-05-07 21:26
その他のジャンル