佐藤『職業としての科学』(2010)
佐藤文隆『職業としての科学』岩波新書、2010.



科学研究の制度は歴史的にどう変わってきたかを振り返り、
今後のあり方について考えるというのがこの本の趣旨。

一握りの天才ではなく、多数の普通の科学研究者が食っていけるようにしなくてはいけない、
というのが著者の基本的なスタンスだが、具体的にどうするのかという話はない。
どちらかというと、読者の意識改革ないしは啓発することに主眼がある。
ただ、その際いったい誰に向かって話をしているのかは必ずしも明確でないように感じる
(たぶん科学者だろうとは思うのだが)。

全編を通じて歴史の話が多いのだが、参照されている文献もそれなりに適切と思うし
(一番驚いたのはフラーの『トーマス・クーン』が引いてあることだ)、
著者の歴史観は大筋で間違っていないと思う。
専門書の体裁ではなく、エッセイ的な部分も多いが、大変読みやすいのは確か。
こういう話題に初めて触れる人にはわりとお勧めできる本だ。

****

著者は有名な物理学者で、一般向けの本も多数。
近年はわりと、科学史と自身の体験をもとにした科学者論が多いようだ。

なお誤解を恐れずに言うと、こういうものは本来、もっと科学史の専門家が書くべきと思う。
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by ariga_phs | 2011-01-23 23:59 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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