川北「「政治算術」の世界」(2004)
川北稔「「政治算術」の世界」
『パブリック・ヒストリー』(大阪大学西洋史学会)、第1巻(2004年)、1-18頁。



「政治算術」なるものが、17-18世紀にはあった。
統計学や経済学の歴史に関連してときどき聞く名称なのだが、
いったいそれは何なのかがよくわからない。

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この論文では、「政治算術」を何かの先駆として位置付けるのではなく、
近世イギリスに固有の知の枠組みとして把握することが試みられている。
主に取り上げられているのは、グラント、ぺティ、キングといった
17世紀イギリスの著述家たちである。

ごく簡単に言うと、政治算術というのは国力を数量的に測ろうとする試みである。
その際、国力の基礎とされるのが人口で、そのため政治算術は事実上、
国の人口を推計し、将来をシミュレートすることに帰着する
(この時代には全数調査(センサス)がなかったことに注意)。
なお、当時具体的に問題だったのは、イギリスがオランダやフランスと比べて
どうなのか、という国際比較だった。

面白いのはそうした人口推計・予測をする際、
論者の社会観や歴史観(この場合の歴史観とは聖書の年代記述である)が
そこに抜きがたく絡まってくる点で、その結果政治算術の議論は
一面では科学的だが他面ではまったくそうでないという外観を呈する。

歴史観ということで言うと、政治算術家は人口が増加を続けると考える点で
進歩主義的だが、その歴史には始めと終わりが想定されているという
興味深い指摘がなされていて、これは近世ヨーロッパという時代を考えるときに
案外重要なことなのではないかと思う。

****

先日参加した研究会で政治算術が話題として取り上げられていて、
そのときの出席者の方からこの論文の存在を教えていただいた。

著者は、僕でも名前くらいは存じているイギリス近代史の有名な先生。
昨年出た新書くらいは読んでみようと前から思いつつも、未読・・・。
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by ariga_phs | 2011-01-31 23:46 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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