崎山「若手研究者問題」(2011)
崎山直樹「崩壊する大学と「若手研究者問題」:現状分析と展望」
『歴史学研究』第876号(2011年2月)、37-46頁。



坂本氏から、こういう論説があるというのを教えてもらった。
若干このカテゴリの方針とは外れるが、当事者として知っておいて損は無い
(むしろ知っておくべき)内容だと思うので紹介しておこう。

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「若手研究者問題」が深刻化しているというのはたぶん
この業界の若手の共通認識だと思うが、
具体的にどういう状況になっていて何が問題なのか、
というのはなかなか把握しづらい。

この論説では、主として人文社会系について、
院生・非常勤講師・ポスドクの現状を概観し、
歴史学分野内外で広く議論が起きるように呼びかけている。
実際のさまざまなデータを見ていると、身につまされるものも多いのは
言うまでもない。

容易に想像されるように、行動を促すことがこの論説の目的である。
「現在進行している収奪のなかにいる人々の声に耳を傾け、
経験を共有することが必要」(43頁)だと著者は言い、
「人文社会科学あるいは歴史学に求められていることは、
このような声を拾いあげ、応答することであろう」(44頁)
と述べられている。

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著者がどういう方なのか、あいにく詳しく知らないのだが、
アイルランド近代史を専門とするかたわら、若手研究者問題についても
多くの意見を発信されているということのようだ。

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言われていることはもっともだと思うが、
もっと考えてみるべきだと感じたことを二つ、自分のためにメモしておきたい。

まず、人文社会系という言葉でものごとを一括りにしないほうがよいのではないか。
これまで何人かの、同じ人文社会系でも領域の異なる人たちと接してきた
印象から言って、若手研究者をめぐる状況はだいぶ違うと思う。
そこを過小評価して連帯を唱えてみても、おそらくうまくいかないだろう。
たぶん、人文社会系の中でもどこかが利益を得、どこかが不利益を被ることになる。

もう一つは、連帯して上げるときの声の内容とトーン。
身内で集まってただ叫んでみても意味はないだろう。
現実問題として、権力は向こう側にあるのであってこちらにではない。
その状況で、どんな響く言葉を発し、どうやってそれを届けるか、が問題だ。
これを、手持ちの材料を総動員して考えるのが人文社会系の役割だろうと僕は思う。
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by ariga_phs | 2011-02-01 00:40 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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