喫茶店で工学について語る
東京在住の、高校時代の友人が、喫茶店に連れて行ってくれるという。



お勧めの場所だということで連れて行かれた先は、
繁華街から一本横道を入ったところの、さらに階段を下りた地下にあった。
薄暗い照明と、アンティークな雰囲気を醸し出す内装に、
クラシックの古いレコードがかかっている。
喋っていいのか?という感じもするが、喧しくならなければ大丈夫らしい。
珈琲を頼み、来る途中で買ってきたパンをかじりつつ
(日本では珍しく、食べ物持ち込み可、なのだそうだ)、
あれこれと話をしてきた。

話の内容はいろいろあるが、中心的な話題は工学だった。
彼は大学院で土木工学をやって、今は船に関することをやっている。
もともと理学寄りの人間だったのが、不本意ながら土木のことをやる中で、
理学とは違う工学の性格や面白さが分かるようになった、という。

そこから、科学と工学とそれにまつわるもろもろについての話になり、
真理発見と実用性の問題とか、モデルの「良さ」についてとか、
シミュレーションと実験との関わりとか、その結果の成立条件の問題とか、
はたまた研究費をめぐるあれこれとか、結局科学とは何なのかとか、
まあそういったことを喋った。

場違いな気もしたが、案外場違いではないのかもしれない。
結局のところ、話題は科学技術であっても、
議論していることは相当抽象的で、そう言いたければ「文系的」なのだ。
彼が、こういう話は工学の人とは出来ない、と言っていたのが印象に残っている。
完全にそうだとは思わないが、ある程度は真実なのかもしれない。

彼はまた、この店もいろいろな人に紹介したいとは思うのだが、
こういう店を良いと思う人はたぶん少ないから・・・、とも言っていた。
そうだろう、と思う。
実際、向こうもこちらも、世間的にはだいぶ変な人であるに違いない。

その彼は、この春から東京を離れ、高専に就職する。
その仕事がどの程度彼に向いているか、一抹の不安を感じなくもないが、
理学から工学に対応していったのだし、きっと何とか頑張ってくれるだろう。

もう使わないから、ということで、地図をもらった。
今日喋ったことと一緒に、これからの役に立てていきたい。
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by ariga_phs | 2011-02-06 23:56 | 歳歳年年
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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