横山「近代力学成立史」(1972)
横山雅彦「展望:近代力学成立史」
『科学史研究』第11巻(1972年)、193-201頁。



橋本ゼミの第2回(実質的に初回)で取り上げられたもう一本がこちら
(もう一本は村上「科学史の哲学」)。
ずいぶん時代がかった一編だが、古典的な科学史の雰囲気を知るために、
という理由で選ばれたものと思われる。

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タイトル通り、「近代力学」の成立過程に関する研究状況の概観。

序のところで、「[...]この「科学革命」において主導的な役割を果たしたのは、
まさにNewton力学の形成だったのであり、この力学をこのような
コンテクストの中に位置づける場合、「古典力学」と呼ぶよりも
「近代力学」と呼ぶほうがふさわしいのは明らか」とある。
そのため、扱われているのはニュートンまでとなっている。

最初の二つの節では、デュエムとコイレの仕事を紹介しながら、
「近代力学」に対する中世力学の関係をどう捉えるか
(連続か、それとも断続か)という論点が提示されている。

第三節ではガリレオの力学についての歴史研究が紹介され、
未解決問題がたくさん存在していることを指摘して結ばれている。
著者自身は特に、ガリレオに先行する16世紀イタリアの技術者たちの存在に
注目しているようだ。

第四節ではデカルトの衝突論に関する研究と、
その他の「minor figures」についての研究を紹介している。
「ところで、17世紀における近代力学成立史といえば、
Galilei, Descartes, Huygens, Newton等の第一級の人物のみを
取り上げて事足れりとされることがこれまでは多かった」という批判は
まっとうなもので、しかも相当早い時期に属するように思う。

最後の第五節ではニュートンを扱っていて、
近年(その当時の話)進んできたマニュスクリプト研究の動向が紹介されている。
その中ではニュートンにおいて衝突論が重要であったことが注意されているので、
第四節が衝突論に充てられているのはたぶんそのためだろう。


****


40年近く前の論考ではあるが、中世からニュートンに至る力学の歴史研究、
ということになると、案外今でも読めるような感じがする。
(そのくらい、さほど大きな研究の進展がない、ということでもある・・・。)
とはいえ、細かい文献などでは新しいものもいろいろとあるわけで、
アップデート版があっても悪くはないだろう。

むしろ今から見て問題なのは、科学革命の本質を無条件的に
ニュートンの力学の形成と同一視していることのほうだ。
近年の研究動向を踏まえるなら、「近代力学」の形成という
テーマ設定そのものの妥当性をまずは議論しなくてはいけないだろうと思う。
そういう意味ではむしろ、「展望:17世紀科学革命」というのが
まずは書かれるべきなのかもしれない。
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by ariga_phs | 2011-04-24 18:52 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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