18世紀学会
この週末は18世紀学会の年会があった。



本当は二日とも終日参加したいところだったが、
やるべきことがほかにもいろいろと立て込んでいる関係上、
初日(土曜)の午後~夜のみ参加してきた。

今回聴いた研究発表は三つ。
なお、この学会では一件あたりの時間が質疑応答込みで50分あり、
多くの場合、論文一本分の内容を報告者が話す、という感じになる。

一つ目の発表は、昨年度知り合った仏文の川村さん(京大人環のご出身)で、
ディドロの『ダランベールの夢』を「発酵」や「類推」という観点から読む、というもの。
この中である意味、最も衝撃的だったのは「atome」という語に関する指摘で、
『百科全書』においてこの言葉の第一義に挙がっているのはいわゆる原子ではなく、
顕微鏡で見ることのできる、なかでも特に小さな微生物、であるというお話(!)。
これは大変勉強になった。

二つ目は、実は僕と学部の同級だった渡邉氏(やはり京大人環、ただし哲学)で、
主にカントとヴォルフにおける「物質的観念 idea materialis」という術語について。
内容のかなりの部分は心理学や心身問題に関するもので、これも大変勉強になった。
(僕の博論でもごくわずかだが、この話に触れないといけないと思われるので。)

三つ目は、社会思想史の方面では第一人者の水田先生。
(僕の聞き間違いでなければ今年92歳になられる、とのこと。)
いわゆる研究発表というよりはむしろ講演というような形で、
ホッブズとスミスの関係について刺激的なお話をされた。
ちなみに、経済学がわからなくてもスミスは研究できる、
そもそもスミスの主著は『国富論』ではなくて、『道徳感情論』と
書かれる筈だった法学の著作(これは本人がそう言っている)、とのこと。

そのあと、会場を移動してレクチャー・コンサートに臨む。
この学会では毎年、18世紀関係の何らかの鑑賞企画が用意されていて、
今年は18世紀フランスのカンタータ。
僕は音楽方面はほとんど素人に等しいのだが、カンタータというのは
一定の形式を備えた器楽伴奏つきの歌曲のこと。
今回はクラヴサン(チェンバロ)とバロック・ヴァイオリン、
それに一部フルート(木管!)の伴奏に、
ソプラノとバリトンという組み合わせだった
(余談だが、どうも僕はクラヴサンという楽器が相当好みであるらしい)。

毎回思うのだが、とにかくこの学会の目玉はこの企画で、
そんなに多くない聴衆のためにプロの方々が演奏をされるという、
たいへん贅沢な時間を過ごすことができた。
こういう企画が実現するのも、音楽や演劇を研究されている方々の
ご尽力によるところが大きいのだと思う。
また、「レクチャー・コンサート」というだけあって、単に演奏だけではなく、
18世紀フランスにおけるカンタータの概要説明や楽器の紹介などもあり、
これまた大いに勉強になった。

そのあとの懇親会では、何人かの方々とお話しをした。
結果として一番よかったのは、野澤さんとほぼ初めてまともに喋ったこと。
研究室の先輩に当たっているだけでなく、研究分野もほぼ被っているのに、
これまでディスカッションをする機会がなかった。
折しも博論の概要を先日読んだところだったので、そのあたりから始まって
18世紀の力学研究に関していろいろと意見交換することができた。
実際にやっていることの方向性はほぼ180度違うのだが、
問題関心の所在などについてはお互いに同意できるポイントが多く、
「ですよね!」という話がいろいろできたのは嬉しい。
ちなみにこれもたまたまだが、肝心の博論本体もいただくことができたので、
時間を作って読まなくては、というところである。

終了後はさらに二次会に出掛け、珍しく相当お酒を飲んで帰ってきた。
この一週間は会社のほうの仕事が本当に大変だったというのもあるし、
学会そのものの満足度がとても高かったので、大いに解放感があった。



18世紀学会というのは、同じ時代を研究している人が
分野に関係なく集まってくる場なので、参加するのが楽しい。
普通の専門的な学会とは違った意味で、さまざまな刺激を受けることができる。
一部しか参加できなかったのは残念だったが、よい一日だった。
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by ariga_phs | 2011-06-19 22:50 | 歳歳年年
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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