Laird and Roux, "Introduction to _Mech. and nat. phil._"
Walter Roy Laird and Sophie Roux, "Introduction,"
in Mechanics and natural philosophy before the Scientific Revolution, ed. W. R. Laird and S. Roux, pp. 1-11. Dordrecht: Springer, 2008.

前掲のSarnowskyの論考が収録されている論文集より、その導入部分。この論集自体は2004年に開かれたワークショップの成果とのこと。古代から17世紀初頭までの、機械学と運動論に関する11本の論考(導入を除いて)が収められている。いろいろと面白そうなのだが暇がないのでとりあえず導入だけ読んだ。



編者によるこの導入では、各論考の議論の紹介は少なめで、むしろ古代から17世紀初頭までの機械学と運動論の歴史について手際よく概観してある。古代はアリストテレスの著作群と擬アリストテレスの『機械学』から、アルキメデス、ヘロン、パッポスまで。続く中世では重さの学やいわゆるオックスフォード学派の運動学、そしてインペトゥスに言及される。次いで16世紀になると、古代や中世の機械学に関する著作が再発見され、その注解から機械学研究が起こってくる。また、16世紀初頭には機械学について書くことはほとんどイタリアでなされたが、この世紀が終わる頃にはイタリアの外でも発展が見られたとされる。

僕の感想だが、16世紀までの「力学史」(なぜ鍵括弧かは後述)を考えるときにはたぶん重要な論点が二つあると思う。一つはここで言われているような、テクストの注釈の伝統で、その意味では特に『機械学』やアルキメデスの再発見ということが決定的に大きい。ただそれと同時に、一方では技術としての機械学の発展というのもあるわけで、そのあたりについてもう少し立ち入って書かれていてもよかったように思う。

それとも関連するが、この導入の一番最後に書いてあって、かつ一番重要だと思うのは、次のようなコメントである。「力学の歴史は――天文学や光学の歴史と異なり――、たいへん異なった学問伝統や思想の伝統の中でさまざまに扱われた、多様な個別のトピックと問題の歴史である。[中略]力学の歴史はかなりの程度、テクストと思想のさまざまな伝統のあいだ、さまざまな学問伝統のあいだ、理論と実践のあいだの関係の歴史である」。これにはまったく同意。そもそも科学革命期以前には単一の学問分野としての「力学」なるものが存在していないわけで、したがってその歴史を語るということは必然的に、一つのまとまりを歴史の中に(歴史家が)構築するということにほかならない。そこを自覚しておかないと、完全に筋違いの議論をしてしまいかねない。肝に銘じておくべき。
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by ariga_phs | 2012-02-01 13:24 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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