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Garber, "Experiment, Community, and the Constitution of Nature" (1995)
Daniel Garber, "Experiment, Community, and the Constitution of Nature in the Seventeenth Century," in Descartes Embodied (Cambridge: Cambridge University Press, 2001), pp. 296-328. [Originally pub. in Perspectives on Science, vol. 3 (1995), pp. 173-205.]



実験が科学の方法として正統的な地位を獲得してくるのは17世紀のことだと言われている。
しかしもう少し具体的に言って、そこでは何がどう変わったのか。

****

この論文の論点は、17世紀後半に登場したロイヤル・ソサエティとともに
実験事実というものに対する新しい認識が出現したということだ。

それまで、実験(ないし経験)事実というのは個人が何度も繰り返し確認できれば
それでよかった(ベーコンやデカルトはそう考えていたとされる)。
が、ロイヤル・ソサエティではそうではなく、実験が多くの人々によって繰り返され、
確かめられることが要請された。

著者はさらに、そうした社会的な性格を持つ実験事実の捉え方というのは
科学研究がなされる組織についてのある種の社会構造を前提している、と言っている。
どちらがニワトリでどちらがタマゴかを言うのは難しいが、
実験事実に関する認識上の変化と科学研究の組織形態の変化とは密接に関連している、
というのがこの論文の提示する見解である。

この主張がどのくらい的を射ているかはほかの事例を検討しないとわからないだろうが、
論点としては非常によいところを衝いているように思う。

****

著者は17世紀の哲学史・科学史ではよく知られた人。
デカルトやライプニッツの自然哲学についていろいろと書いているのは存じていたが、
こういう論文があるのは知らなかった。

先日のSTS勉強会の折、17世紀の実験科学との関連で
ShapinやDearと並んで引かれていて気になったので読んでみた次第。
(むしろ後者のほうを先にちゃんと読め、という話なのだが・・・)
by ariga_phs | 2011-01-27 19:15 | 何かに使えそう
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筆者プロフィール
有賀暢迪(1982年生)
科学史家。筑波在住。
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